FX歴12年、システムトレーダーのRYOです。
「ChatGPTでEA(自動売買プログラム)が作れるらしい」——この話、ここ最近で一気に広まりました。実際、ネットには「プログラミング知識ゼロでEAが作れた!」という手順記事が大量にあります。自分のところにも「AIに作らせたEAって、結局勝てるんですか?」という質問がよく届くようになりました。
先に結論を言っておきます。「AIでEAは作れる」。これは本当です。 でも、「作れる」と「勝てる」はまったく別の話です。ここを混同したまま実戦に出すと、ほぼ確実に痛い目を見ます。
この記事は、これからAIにEAを作らせてみたい人が、最初に知っておくべき「総論」です。具体的な検証結果はまだ出しません(それは別途、実際にやってみたシリーズで全部出します)。まずは「何が作れて、どこに壁があり、プロは何を見るのか」を、12年やってきた立場から正直に整理します。なお、これは特定の手法やEAを推奨する助言ではありません。
AIでEAは「作れる」。ここは事実
まず、AIにEAを作らせること自体は、もう普通にできます。「こういう条件で買って、こういう条件で決済するEAをMQL(MT4/MT5の言語)で書いて」とお願いすれば、それらしいコードが返ってきます。プログラミングを一度も書いたことがない人でも、雛形を手に入れられる。これは本当に大きな変化で、EA開発の入口のハードルは、確実に下がりました。
だから「ChatGPT EA 作り方」で検索すると、手順を解説した記事がいくらでも出てきます。供給は十分にあります。
ただ——ここからが本題です。世の中の「作り方」記事の多くは、「コードがコンパイル(エラーなく動く状態に)できた」ところで終わっている。「で、それは勝てるEAなのか?」には、ほとんど答えていません。一番知りたいところが、すっぽり抜けているんです。
実際によくある「壁」(一般論として)
AIにEAを作らせると、初心者が必ずと言っていいほどぶつかる壁があります。具体的な検証数値はシリーズで出すとして、ここでは「どこでつまずきやすいか」という一般論を共有します。
壁①:コードが一発では動かない。
AIが出すコードは、それっぽく見えても、そのままでは動かないことが多い。関数の使い方が古かったり、MT4とMT5の仕様差を取り違えたり、変数の扱いがおかしかったり。エラーを貼って直してもらう、を何度も往復することになります。プログラミングの知識がゼロだと、どこが間違っているのか自体が分からないので、ここで詰まる人が続出します。
壁②:ブローカー差・環境差でエラーが出る。
仮に自分の環境で動いても、別のブローカー(証券会社)に持っていくと動かない、ということが普通に起こります。銘柄名の表記(GOLDなのかXAUUSDなのか)、桁数、最小ロット、ストップレベルの制約……このあたりはブローカーごとに違っていて、AIはあなたが使う環境を知らないので、ここまで面倒は見てくれません。「自分の環境では動いたのに人に渡したら動かない」は定番のつまずきです。
壁③:そもそも“勝てるロジック”は出してくれない。
これが本質的な壁です。AIは「あなたが指示したルール」をコードにするのは得意ですが、「勝てる売買ルールそのもの」を考えてくれるわけではありません。「移動平均がクロスしたら買う」と頼めばその通り書きますが、それが勝てるかどうかは別問題。ロジックの中身を考えるのは、結局あなた(人間)の仕事です。
「作れる」と「勝てる」は別問題
ここを、しつこいくらい強調しておきます。
AIに作らせたEAをバックテスト(過去データでの検証)にかけると、たまに「すごい成績」が出ることがあります。でも、その多くは——
- 過剰最適化(カーブフィッティング):過去データにだけピタリと合うように作り込まれていて、未知の相場では通用しない状態。「過去には完璧だが未来には弱い」典型。
- 都合のいい期間の切り出し:好調だった期間だけを切り取れば、どんな戦略でも見栄えはよくなる。
- リスク設定で盛られた数字:複利でロットを膨らませれば、純益の額はいくらでも大きく見せられる。戦略の実力とは別物。
「勝率90%」「純益◯億」みたいな派手な数字ほど、この罠が潜んでいます。コードが動くこと(作れる)と、未知の相場で利益を残せること(勝てる)の間には、深い谷がある。 AIは前者の谷は越えさせてくれますが、後者の谷は越えさせてくれません。
プロが見ているポイント
では、12年やってきた人間が、EA(AI製だろうが手書きだろうが)を評価するときに何を見ているか。順番に。
① まず最大ドローダウン(DD)から見る。
利益ではなく「最悪どこまで資産が減ったか」を最初に見ます。純益が大きくてもDDが極端なら、現実には運用できない。利益より先にリスクを確認するのが、生き残る人の癖です。
② リスク設定とロットを必ず確認する。
その成績が「どんなリスク設定で出たのか」。固定ロットの素の実力はどうなのか。複利で膨らんだ見かけの数字を、実力と勘違いしない。
③ 上昇相場以外の年でどうだったか。
ゴールドのように長期で上がってきた相場では、買いだけのEAが好調に見えがちです。でも横ばい・下落の年を含めて見ないと、実力は分かりません。好調な年だけを開始日にした成績は信用しない。
④ インサンプルとアウトオブサンプル。
最適化に使った期間(インサンプル)で良いのは当たり前。使っていない未知の期間(アウトオブサンプル)でも通用するか——ここで初めて「本物かどうか」が見えてきます。AI製EAは特に、ここで化けの皮が剥がれやすい。
要するにプロは、派手な数字を喜ぶのではなく、その数字を疑って分解する。これはAI時代でも変わらない、むしろAIで“それっぽい数字”が量産される時代だからこそ大事になる姿勢です。
まとめ:AIは最強の武器。でも判断は人
整理します。
- AIでEAは作れる。入口のハードルは確かに下がった。
- でも「作れる」と「勝てる」は別。コードが動くこと ≠ 未知の相場で利益が残ること。
- AIは「指示をコードにする」のは得意。でも「勝てるロジックを考える」「その成績を疑って検証する」のは、結局人間の仕事。
自分のスタンスは「AIは最強の武器、でも最終判断は人」です。AIを否定する気はまったくありません。むしろ道具として使い倒すべき。ただし、出てきたものを鵜呑みにせず、12年分の検証の目で疑って分解する——そこに人間の価値が残ると思っています。
そこで自分は今、「実際にAIにEAを作らせて、忖度なしに検証してみた」シリーズをこのブログで始めています。AIに作らせたゴールドEAを長期バックテストにかけて、出てきた派手な数字を一つずつ分解していく記録です。具体的な検証データ・弱点・つまずきは、シリーズの中で全部出していきます。「AIにEA、作ってみたいな」と思った人ほど、実戦に出す前に、その記録を一度読んでみてほしい。続報も、勝ちも負けも正直に書いていきます。
注記(必ずお読みください)
- 本記事は、AIを用いたEA(自動売買プログラム)開発というテーマの入門的な情報整理を目的としたものであり、特定のEA・手法・通貨・銘柄の売買を推奨するもの、または投資助言を行うものではありません。
- 記事中で触れた検証・バックテストに関する記述は一般論であり、また数値は特定の検証条件における過去の結果を前提とするものです。過去の結果は将来の成果を保証するものではありません。
- FX・自動売買にはリスクが伴い、元本割れ(損失)の可能性があります。
- 投資・運用に関する最終的な判断は、ご自身の責任において、余裕資金の範囲で行ってください(自己責任)。

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