ゴールドEA「Arsene」複利シミュレーション ― 自分の資金だと”いくら増えて・いくら溶ける”のか

自作EA

FX歴12年、システムトレーダーのRYOです。

これまでこのブログで、自分の12年の裁量ロジックを詰め込んだゴールド(XAUUSD)の自動売買EA「Arsene(アルセーヌ)」(戦略は自分、実装はAIの力も借りた。AIに丸投げで作らせたEAではありません。あれは別シリーズで忖度なく検証しています)を、数字で正直に検証してきました。

「複利のリスク%を上げると純益もドローダウン(DD)も同じだけ膨らむ」「同じ複利10%でも始めた年で+1.6億と破綻に分かれる」――この2つは、何度も書いてきた話です。

今日はそれを、「自分の口座のお金」に置き換えてみます。

検証記事の純益って、「+1.6億」とか「+3億」とか、桁が大きすぎて、正直どこか他人事に感じませんか。僕もそうでした。だから今日は、30万円・100万円・300万円という現実的な元手に置き換えて、「その複利設定だと、自分のお金は何倍になりうるのか/同時に、いくらまで一時的に溶けるのか」を、純益とDDを必ず同じ大きさで並べます。

先に断っておきます。これは「この設定で儲かりますよ」という案内ではありません。事実の対照です。「リスクを上げると、増える額も、溶ける額も、同じだけ膨らむ」という表裏一体を、自分の財布の金額で実感してもらうための記事です。選ぶのも、その結果に責任を持つのも、使う人自身です。

Arseneは販売していません。これは検証記録です。数字は盛らず、勝ちも負けも、破綻した事実も全部出します。


結論を先に:3つだけ

長くなるので、結論を置いておきます。

  1. 「いくら増えるか」と「いくら溶けるか」は同じレバーの表裏。 複利5%→12%で純益はおよそ1,700倍に膨らむが、同時にDD(資産が一時的にどれだけ減るか)は34%→70%へ一直線に悪化する。片方だけ見るのは事実の半分しか見ていない。
  2. 見るべきは純益の桁ではなく「自分が耐えられるDDの%」。 300万が一時的に115万まで溶ける(DD61%)のを、黙って見ていられるか。答えがNoなら、その設定は――純益がいくら派手でも――自分には向いていない。
  3. そして”いつ始めるか”という運まで乗る。 同じ複利でも開始年で結末は真逆(好調期スタート=億/2010スタート=破綻)。複利の派手な数字は「戦略の実力」ではなく「賭け金の倍率×タイミングの運」が作っている。

ここから、数字で全部裏付けます。


まず土台:Arseneの素の実力(固定ロット)

複利の話に入る前に、必ず「素の実力」から見ます。化粧をはがした、賭け金を増やさない固定ロットのArseneです。これが一番ごまかしの効かない測り方なので。

検証条件はいつも通り。成績は条件とセットでないと意味がありません。

項目 内容
通貨ペア GOLD(XAUUSD) / XMTrading実データ
時間足 M1(1分足)
初期証拠金 200,000
データ品質 モデリング99.90%(全ティック)/ 不整合エラー0
中心に使う検証 2022年〜の約4.4年・1,116トレード(開始年・母数をほぼ揃えたシリーズ)

▼ 実際のバックテストレポート(運用パラメータのみ白塗りで非公開)

Arsene 実バックテストレポート
▲ 複利10%の実バックテスト。複利は数字が伸びる一方、相対ドローダウンも大きくなる点に注意してください。運用パラメータのみ白塗りで非公開、期間・結果の数字はすべて実データです。
Arsene 実バックテスト損益曲線
▲ 固定ロット0.01の実バックテスト損益曲線。増え方は地味でも、ドローダウンが浅く頑健。これが”素の実力”。(実バックテスト・XMTrading実データ)
Arsene 実バックテスト損益曲線
▲ 複利10%の実バックテスト損益曲線。爆発的に伸びるが、相対ドローダウンは深い(資産が一度大きく消える局面あり)。純益とDDは表裏一体。(実バックテスト・XMTrading実データ)

この2022〜シリーズの固定ロット(賭け金を増やさない素のArsene)は、こうです。

指標
純益 174,636
相対ドローダウン 6.08%
プロフィットファクター(PF) 1.52
勝率 64.78%(1,116トレード)

純益17.5万、DDわずか6%。これがArseneの「堅実な顔」です。ちなみに同じ固定ロットで2010年から16.4年・4,361トレードまで伸ばしても、マイナスに沈まず破綻もしませんでした(PF1.08・DD33.42%)。派手さは無いけれど、「いつ始めても口座が飛ばなかった」のは、この固定ロットだけです。ここは別記事(Arsene決定版)で詳しく解剖しています。

さて、ここからが本題。この固定ロットに「複利」という掛け算を乗せると、純益も、DDも、どう膨らむのか。


本題1:純益とDDは「同じレバーの表裏」― 複利の階段

Arseneは「残高に対して何%をリスクに張るか(リスク%)」を上げることで、複利運用になります。リスク%を5→6→8→10→12%と上げていったときの、純益と相対DDの階段がこれです。右の列を、左と同じ大きさで必ず見てください。

設定 純益 相対ドローダウン PF 勝率
固定ロット 174,636 6.08% 1.52 64.78%
複利5% 7,229,841 33.78% 1.69 約64%
複利6% 13,401,350 40.09% 1.63 約64%
複利8% 47,783,816 52.33% 1.62 約64%
複利10% 161,038,078 61.50% 1.70 約64%
複利12% 296,704,652 70.01% 1.76 約64%

純益だけ追うと、固定ロットの17.5万から複利12%の約3億まで、ざっと1,700倍に膨れます。「すごい」と思いますよね。

でも、ここで一番大事な事実を言います。この膨張は、Arseneが急に賢くなったから起きているのではありません。 いちばん右の勝率を見てください。どの設定でも64%前後でほぼ一定です。トレードそのものの優位性(勝率・PF)は、ほとんど変わっていない。

変わっているのは、「残高に比例して張る賭け金の倍率」だけです。だから――

「純益3億」と「相対DD70%」は、まったく同じ操作(賭け金を増やす)の、表と裏にすぎない。

片方(億)だけ見せて、もう片方(7割減)を隠すのは、事実の歪曲です。だから僕は、純益を出すときは必ず同じ大きさでDDを併記します。この記事のタイトルが「いくら増えて・いくら溶ける」と両方書いてあるのは、そういう理由です。

なお、さらに踏み込んだ複利15%や、もっと無茶な複利30〜50%まで上げるとどうなるかは、番外編(複利50%の罠)で解剖しました。結論だけ先に言うと、ある地点から先はリスクを上げても純益はほぼ増えず、DDだけが90%超まで膨らみます(複利15%相当では相対DDは80%前後の水準まで来ます。※この80%前後の数字は別シリーズ=2020年開始6.4年の検証由来で、上の表の2022〜シリーズとは期間が異なります。期間が違えば数字も動くので、横並びの厳密比較ではなく「これ以上上げるとDDはこの域に入る」という方向の目安として読んでください)。


本題2:これを「自分の口座のお金」に置き換える

ここが、この記事で新しく見せたいところです。

上の純益は初期証拠金20万円・特定期間での絶対額なので、桁が大きくてもピンと来ません。なので、「DDの%」を、自分の元手に当てはめて、いくら一時的に溶けるかを円で見ることにします。DDの%は元手がいくらでも変わらないので、ここは素直に掛け算できます。

「一時的にいくら溶けるか」を、元手別に

各リスク帯の相対DDを、元手30万・100万・300万に当てはめると、運用の途中で一時的にここまで減る局面がある、という金額がこうなります。

設定 相対DD 元手30万なら一時的に… 元手100万なら… 元手300万なら…
固定ロット 6.08% 約28.2万まで(−1.8万) 約93.9万まで(−6万) 約281.7万まで(−18万)
複利5% 33.78% 約19.9万まで(−10万 約66.2万まで(−34万 約198.7万まで(−101万
複利6% 40.09% 約18.0万まで(−12万) 約59.9万まで(−40万) 約179.7万まで(−120万)
複利8% 52.33% 約14.3万まで(−16万) 約47.7万まで(−52万) 約143.0万まで(−157万
複利10% 61.50% 約11.6万まで(−18万) 約38.5万まで(−62万) 約115.5万まで(−185万)
複利12% 70.01% 約9.0万まで(−21万) 約30.0万まで(−70万) 約90.0万まで(−210万)

※相対DD=資産のピークからの最大下落率。あくまで「一時的にここまで減る瞬間があった」という意味で、最終損益ではありません(最終的には上の純益まで戻った検証結果です)。でも、その途中の谷を、人間が黙って見ていられるかが問題なのです。

ここで質問です。複利10%で300万を回していたら、運用の途中で「300万 → 115万」まで減る瞬間がある。185万が一時的に蒸発している画面を、何もせず眺め続けられますか。

僕の経験上の答えは、「ほぼ無理」です。検証記事でも何度も書きましたが、バックテストは耐えても、人間の心が耐えられない。たいていは半分も溶けた時点で「もう無理だ」と手で止めてしまい、止めた直後に相場が戻って、本来取れたはずの回復を逃す。派手な純益は、この谷を最後まで見続けられた人だけが受け取れる、たらればなのです。

「いくら増えるか」も、同じ元手で見ておく

公平に、増える側も同じ元手で見ます。上の純益は初期証拠金20万円スタートの結果なので、ざっくり「元手が何倍になったか」の倍率で見るのが分かりやすい(複利は元手に比例して効くので、倍率はそのまま使えます。※厳密にはMaxLots上限の効き方で多少ずれますが、桁感の目安として)。

設定 元手に対する増え方の目安 同時に抱えるDD
固定ロット ほぼ横ばい〜微増(賭け金を増やさないので) 6%
複利5% 数十倍規模 34%
複利10% 数百倍規模 61%
複利12% 千倍規模 70%

増える側だけ見れば夢があります。でも、その夢には必ず同じ大きさのDDが貼り付いている。「複利12%で千倍」の隣には「資産の7割が一度溶ける」が、いつも並んでいる。これがArseneの――というより複利そのものの――正体です。


本題3:そして”いつ始めるか”の運が、全部に乗る

ここまでの数字には、もうひとつ前提が隠れています。上の純益は「2022年スタート」という、わりと恵まれた開始年で出たものだということです。

同じ複利10%でも、始めた年だけを変えると、結末は真逆になります。これは決定版で詳しく書いた話ですが、今日の文脈で外せないので、結論だけ再掲します。

開始年 期間 同じ複利10%の結末 相対DD
2022年〜 4.4年 +1億6,104万 61.50%(深いが耐域内)
2016年〜 10.4年 +6,146万(2022開始より少ない!) 87.08%(瀕死)
2010年〜 16.4年 破綻(口座退場) ―(成績ファイルすら残らず)

設定は全部同じ複利10%です。長く回した方が、少なく、深く、最後は死ぬ。複利の指数曲線は「いつ、どの残高で、上昇相場を迎えるか」という順序に全面的に依存します(理由=なぜArseneが上昇相場依存なのかは設計思想の記事に書きました)。

つまり、本題2の「複利10%で300万→億」みたいな数字は、戦略の実力ではなく、賭け金の倍率 × 好スタートを引いた運の産物です。同じ設定で1年ズレれば、115万まで溶けるどころか、口座そのものが消える可能性がある。複利は、見かけほど頑丈ではありません。


だから僕の結論は「保守側から入る」― ただし指南ではなく事実として

「じゃあ、どのリスク%で回せばいいの?」とよく聞かれます。でも、僕の側から「この設定で儲かる」とは言えませんし、言いません。 儲かる設定を個別に指南するのは、ツール提供の範囲を超えてしまうからです(このあたりの線引きは正直に守っています)。

代わりに、事実だけを置きます。選ぶのも、その結果に責任を持つのも、使う人自身です。

その上で、データから「事実として」言えることは、これだけです。

  • Arseneで唯一「いつ始めても破綻しなかった」のは、固定ロット〜低リスク帯だけでした(固定ロットは16年・4,361トレードで破綻なし)。
  • DD50%超(複利8%以上)は「資産の半分超が一度溶ける」水準。 300万なら一時的に143万以下まで。これに資金的・心理的に耐えられる人は、ほとんどいません。
  • 生き残っていれば、相場が来たときに取り返せる。退場したら、そこで終わりです。複利10%・2010スタートの口座は、上昇相場が来る前に飛びました。

だから、データ上いちばん説明がつく入り方は、一番防御的な側(固定ロット〜低リスク%)から入って、まず素の実力を自分の口座で確かめることだと、僕は考えています。これは「低リスクなら儲かる」という話ではありません。「低リスクは、谷で心が折れて止める前に、戦略の期待値を回収しきるための前提条件」だという、生き残りの話です。

考える順番としては、こうなります。

  1. まず「自分はDD何%まで耐えられるか」を、上の円換算の表で正直に決める。
  2. そのDD%に収まるリスク帯を選ぶ(純益の桁から選ばない。DDから選ぶ)。
  3. いきなり本番ではなく、固定ロット〜低リスクで素の実力を確かめる。

純益の派手さからリスクを選ぶと、谷で死にます。DDの自分の耐性からリスクを選べば、少なくとも生き残れる。この順番だけは、12年やってきて確信しています。


実際に動かすなら(土台の話)

ここまで読んで「自分のDD耐性で考える、という見方は分かった」となったとして、では実際にこういうEAを動かす場合、構造上どうしても必要になる土台があります。

EAを24時間動かすには、海外FX口座VPS(24時間落ちないネット上の仮想サーバー)が、仕組み上ほぼ必須になります。これはArseneに限らず、MT4/MT5でEAを真面目に回すなら共通の話です。ただし「どこの業者がいい」という断定的な勧誘は、僕のスタンスではしません。選び方は重視点(コスト・約定・信頼性)で変わるので、比較として丁寧に書くべき内容だからです。

  • 📎 EAを動かす前の前提(低リスク必須・固定ロットで実力を見る・期待値で考える)の全体像 →(内部リンク:「Arseneを動かす前に知っておくこと」へ)
  • 📎 海外FX口座の選び方・比較(ゴールドEAを回す口座) →(内部リンク:「海外FX口座比較」へ)
  • 📎 EA運用のVPSの必要性・比較 →(内部リンク:「VPSの必要性+比較」へ)

繰り返しますが、ここでの僕の役割は「土台が構造上いる」という一般論を示すところまでです。Arseneそのものについても、今やっているのは勝ちも負けも破綻も含めて検証の中身を正直に公開することだけで、見返り(口座開設など)と引き換えに何かを渡す、という話は一切しません。


まとめ:見るべきは純益の桁ではなく、自分が耐えられるDD

最後に、持ち帰ってほしいことを3行で。

  • 純益とDDは同じレバーの表裏。 複利5%→12%で純益は約1,700倍、でもDDは34%→70%へ。片方だけ見るのは半分しか見ていない。
  • 自分のお金に置き換えると生々しい。 複利10%・元手300万は、途中で115万まで溶ける瞬間がある。そこを黙って見ていられるかが、設定選びの本当の基準。
  • そして”いつ始めるか”の運が乗る。 同じ複利10%でも好スタート=億/2010スタート=破綻。派手な純益は実力ではなく、賭け金の倍率×タイミングの産物。

「いくら儲かるか」から考えると、谷で死にます。「いくらまで減るのに耐えられるか」から考えれば、少なくとも生き残れる。 生き残ってさえいれば、相場が来たときに取り返せます。これが、12年やってきて骨身にしみている、たったひとつの結論です。

Arseneの検証の続報(過剰最適化の宿題への取り組みや、全天候型「Noir」の開発状況)も、引き続き正直に書いていきます。数字は盛らず、勝ちも負けも破綻も全部出す。それが自分のやり方なので。


注記(必ずお読みください)

  • 本記事に記載したバックテスト結果は、特定の検証条件(XMTrading実データ・XAUUSD・M1・モデリング品質99.9%・主に2022年〜2026年の約4.4年/一部は各開始年〜2026年・変動スプレッド)における過去の結果であり、将来の成果を保証するものではありません
  • 成績はリスク設定(ロット・リスク%)に比例して変動します。本記事の純益の大きな数字(+1.6億・約3億など)および「元手別に増える/溶ける金額」は、複利・高リスク%という設定の結果であり、達成可能な利益・到達目標として提示するものではありません。同じ設定でも開始年により破綻(元本喪失・口座退場)に至った実例があります(複利10%・2010年スタートで破綻)。
  • 「元手30万・100万・300万」の円換算は、相対ドローダウン率を元手に当てはめた説明上の試算であり、実際の運用で同じ金額になることを保証するものではありません。あくまで「DDの大きさを体感する」ための目安です。
  • FX・自動売買にはリスクが伴い、元本割れ(損失)の可能性があります。投資は自己責任で、必ず余裕資金の範囲で行ってください。
  • 本記事は特定のEA・通貨・設定の売買を推奨するものではなく、検証記録の共有を目的としています。リスク設定の選択とその結果については、利用者ご自身の判断と責任に委ねられます。海外FX業者の多くは日本の金融庁登録業者ではありません。利用にあたっては信頼性・税制・出金条件等をご自身で十分に確認してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました