FX歴12年、システムトレーダーのRYOです。
正直に書きます。自分が12年やってきたゴールド(XAUUSD)の裁量ロジックを、EAの形に落とし込んでみました。名前は「Arsene(アルセーヌ)」。GOLDのM1(1分足)でロングだけを狙う、押し目買いのスキャルピングEAです。戦略もエントリーの判断も全部、自分の12年の経験から組み上げたもので、コーディング(実装)の部分だけAIの力も借りました。
で、6.4年分のバックテストを回したら、純益が約4億5,170万円という数字が出てきました。
……はい。普通なら、ここで「最強ゴールドEA爆誕!」とか書いて売り出すんでしょう。でも僕は、この数字を見た瞬間に手が止まりました。怖くて、このままでは自分の口座では絶対に回せないと思ったからです。
今日はその理由を、検証データを全部出しながら、自分で数字を解剖していきます。Arseneは販売しません。これはあくまで検証記録です。
結論:4.5億は「複利の見せ方」が作った数字。固定ロットの実力はPF1.41
先に結論から書きます。後で詳しく解剖しますが、要点はこうです。
- バックテストの技術的な品質は高い(モデリング99.9%・全ティック・6.4年・1,582トレード・勝率62.77%)。優位性自体はプラスで確認できた。
- ただし「純益4.5億」は、リスク15%という超攻撃的な複利設定で膨らんだ見かけの数字。戦略そのものの実力値ではない。
- 固定ロット(0.01ロット)換算の正直な実力はプロフィットファクター(PF)約1.41、純益およそ19万円相当。 4.5億とは桁が3つ違います。
- そして最大の問題が、相対ドローダウン(DD)81.73%。一時的に資産の8割が消える局面があった、という意味です。
派手な数字ほど、裏でロットがどう動いていたかを見ないと意味がない。これが、12年やってきて骨身にしみている感覚です。
ゴールドEA「Arsene」のバックテスト検証条件
まず、どういう条件で回したのか。成績は条件とセットでないと意味がないので、先に出しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通貨ペア | GOLD(XAUUSD) / XMTrading実データ |
| 時間足 | M1(1分足) |
| 期間 | 2020年1月 〜 2026年6月(約6.4年) |
| 初期証拠金 | 200,000 |
| データ品質 | モデリング99.90%(全ティック)/ 不整合エラー0 |
| テストバー数 | 約227万本 / 総トレード1,582回 |
| ロット設定 | リスク%複利・RiskPercent=15%・MaxLots=50 |
ここで一番大事なのが、最後の行の RiskPercent=15% です。これは1トレードあたり残高の15%をリスクに晒す設定。仕様書が推奨する現実的な範囲は0.5〜1%なので、その15〜30倍という、かなり振り切った攻撃設定で回されています。4.5億という数字の「カラクリ」は、ほぼ全部ここに集約されます。
主要指標:勝率62.77%は本物。でも数字の見え方には注意
複利設定のままの主要指標はこうです。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 総損益(複利・リスク15%) | 451,701,594 |
| プロフィットファクター(PF) | 1.76(複利ベース) |
| 最大ドローダウン | 17.44% |
| 相対ドローダウン | 81.73% |
| 勝率 | 62.77%(993勝 / 589敗) |
| 総トレード数 | 1,582回(全てロング、ショートは0) |
勝率62.77%は、6.4年・1,582トレードという十分な母数で出た数字なので、ここは素直に信頼していいと思っています。利確は小さく(TP小)、損切りは大きく(SL大)という不利なリスクリワードを、高勝率で支える非対称型。設計通りに機能していました。
決済の内訳を見ると、戦略の性格がよく分かります。
- 時間撤退(時間切れ決済):54.6%(平均はわずかにマイナス)
- 利確:38.1%
- 損切り:7.3%
過半数が「時間切れの小負け」、利益は38%の利確が稼ぎ、損失は7%の損切りに集中。 レンジや横ばいでは小負けが積み上がり、トレンドが出たときの利確で稼ぐ構造が、数字でハッキリ出ていました。
ここからが本題:4.5億の「カラクリ」を解剖する
ここが今日一番伝えたいところです。なぜ「4.5億は実力値じゃない」のか。年ごとのロットと損益を並べると、絵が一気に変わります。
| 年 | 平均ロット | 複利での損益 | 固定0.01ロット換算 |
|---|---|---|---|
| 2020 | 0.24 | +491,082 | +23,944 |
| 2021 | 0.49 | -263,018 | -8,460(負け年) |
| 2022 | 0.41 | -86,250 | +2,360(ほぼ横ばい) |
| 2023 | 0.27 | -61,125 | +2,188(ほぼ横ばい) |
| 2024 | 0.93 | +3,378,808 | +41,385 |
| 2025 | 26.39 | +207,498,542 | +80,554 |
| 2026(〜6月) | 50.0(上限張付) | +240,743,556 | +48,149 |
見てください。純益4.5億のうち、約99%が2025〜2026年に集中しています。そしてその時期は、複利でロットが平均26〜50枚(上限張り付き)まで膨れ上がった時期と完全に一致しています。

つまり、利益額の大半は「戦略が急に賢くなった」からではなく、複利でロットが大きくなった後にたまたま大きな相場が当たったことの産物です。実際、全トレードの13.8%はMaxLots=50の上限に張り付いていて、後半はもはや「複利」ですらなく「固定50ロット運用」に近い状態でした。
そして固定ロット(0.01)に換算した正直な実力値はこちら。
- 純益:約19万円相当
- PF:約1.41
- 期待利得:1トレードあたり約120円相当
優位性は確かにプラス。でも4.5億とは別世界の数字です。「6.4年で4.5億」を見出しに使うのは、僕の基準では誇大広告です。だから使いません。
正直に書く弱点:DD81%・上昇相場依存・ロング専用
ここからは弱点を全部出します。隠してもしょうがないので。
1. 相対ドローダウン81.73%。
リスク15%という過大設定では、資産のピークから一時的に8割が消える局面がありました。これに耐えられる人はまずいません。ただ、これは戦略固有の欠陥というより「設定が攻撃的すぎる」ことの帰結で、リスクを推奨の0.5〜1%に落とせば、DDは数%〜十数%台に収束すると見込んでいます。裏を返せば、低リスク運用が必須条件ということです。
2. ゴールドの上昇相場に全面依存。
固定ロットで見ると2021年は明確な負け年、2022〜23年はほぼ横ばい。優位性がしっかり出るのは2024年以降=金が歴史的に上昇した局面と同期しています。レンジや下落が長く続けば、利益が出ない期間が年単位で続きうる。
3. ロング専用。
1,582トレード全てが買い。ショートは0です。金の長期上昇バイアスに乗っている戦略なので、全天候化にはショート系統の追加が必須です。
4. カーブフィット(過剰最適化)の懸念。
このEAの選別フィルタは、係数が固定された大規模な判別関数で、自由度が非常に高い構造です。現状のバックテストは全期間がインサンプル(最適化に使った期間)の疑いがあり、未知の期間での再現性はこれから検証する段階。これが、僕が「まだ実戦に出せない」と判断した一番の理由です。
だから今、リスク管理を組み込んだ改良版「Noir」を作っている
ここまで読んでもらえば、僕がなぜArseneをそのまま使えなかったか、伝わったと思います。派手な数字に飛びつくほど、裏のリスクが怖くなった。 それが正直な感覚でした。
そこで今、Arseneのロジックはそのままに、リスク管理を組み込んだ改良版「Noir(ノワール)」を開発しています。狙いは、負け相場での損失を頭打ちにして、リスク調整後のリターン(PFとドローダウン)を改善すること。具体的には、
- 月次の損失ブレーキ(一定以上負けたらその月は新規を止める)
- 日足トレンドフィルタ(上昇方向のときだけ稼働)
- スコア厳選(取引数をさらに絞る)
- 損切りに余裕を持たせる調整
といった仕組みを試しています。これがレンジ・下落相場で実際に損失を抑えられるかを、これから検証していきます。Noirの検証結果は、固まり次第このブログで公開する予定です。販売うんぬんはまだ先の話で、今は開発と検証の途中経過の共有です。
数字を盛らずに、勝ちも負けも全部出す。それが12年やってきた自分のやり方なので、続報も正直に書いていきます。
注記(必ずお読みください)
- 本記事に記載したバックテスト結果は、特定の検証条件(XMTrading実データ・XAUUSD・M1・2020年1月〜2026年6月・変動スプレッド・モデリング品質99.9%)における過去の結果であり、将来の成果を保証するものではありません。
- 成績はリスク設定(ロット・リスク%)に比例して変動します。本記事の「純益4.5億・PF1.76・相対DD81.73%」は、リスク15%・複利・MaxLots=50という極端な設定の結果です。
- FX・自動売買にはリスクが伴い、元本割れ(損失)の可能性があります。投資は自己責任で、余裕資金の範囲で行ってください。
- 本記事は特定のEA・通貨の売買を推奨するものではなく、検証記録の共有を目的としています。



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