FX歴12年、システムトレーダーのRYOです。
これまでこのブログでは、自分の12年の裁量ロジックを詰め込んだゴールド(XAUUSD)の自動売買EA「Arsene(アルセーヌ)」(戦略は自分、実装はAIの力も借りた)について、純益やドローダウン(DD)といった「結果の数字」を正直に出してきました。「複利4.5億の裏に相対DD81%がある」とか「同じ複利10%でも始めた年で+1.6億と破綻に分かれる」とか。
今日は、その一段下の話をします。「で、Arseneって、実際どういうトレードを積み重ねて、その結果にたどり着いてるの?」という、取引の中身そのものです。
純益やDDは「結果」です。でもその結果は、1,582回という膨大な取引の積み重ねで出来ています。その1回1回が、どういう形で決済されているのかを分解すると、このEAの”性格”がくっきり見えてきます。今日はそれを、決済データだけで解剖します。
最初に断っておきます。この記事でも、エントリーの具体的な条件やしきい値、内部のスコアリングの中身は一切書きません。 そこはArseneの中身そのものなので守ります。書くのは「どういうトレードを積み重ねているか」という、決済結果から見える”挙動の性格”までです。レシピ(具体的な数値ルール)は出しませんが、性格は全部見せます。
Arseneは販売していません。これは検証記録です。数字は盛らず、勝ちも負けも全部出します。
結論を先に:Arseneは「小負けを積んで、利確で稼ぐ」非対称型
長くなるので、結論を先に置きます。今日の主役は、複利でロットが暴れる前の、固定ロットで6.4年・1,582トレードを回したときの「決済の内訳」です。
| 決済の種類 | 割合 | 中身 |
|---|---|---|
| 時間切れ(時間撤退) | 54.6% | 一定時間で勝負がつかず撤退。平均はわずかにマイナス |
| 利確(TP) | 38.1% | 狙い通り利が乗って確定。ここが稼ぎ頭 |
| 損切り(SL) | 7.3% | 想定が外れて確定。回数は少ないが1回が重い |
▼ 実際のバックテストレポート(運用パラメータのみ白塗りで非公開)

ここから見える性格を3行でまとめると、こうです。
- 取引の半分以上(54.6%)は「決着がつかず時間で撤退」。ここで小さくマイナスをコツコツ払っている。
- 稼ぎは38.1%の利確に集中。レンジで払った小負けを、トレンドが出たときの利確でまとめて回収する。
- 損切りは7.3%しかないが、1回あたりが重い。利確は小さく(TP小)、損切りは大きく(SL大)という、高勝率(62.77%)で支える非対称設計。
「勝率62.77%」という数字だけ見ると「3回に2回近く勝つ強いEA」に見えます。でも内訳を割ると、その勝ちの実態は”派手な大勝ち”ではなく、”小さく刻んだ利確の積み重ね”だと分かります。ここから、数字で裏付けていきます。
検証条件(成績は条件とセット)
まず、どの検証データを分解しているのか。成績は条件とセットでないと意味がないので、先に出します。今日扱うのは、賭け金の倍率という化粧をはがした「固定ロット」の取引です。複利でロットが暴れる前の、素の挙動を見たいからです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通貨ペア | GOLD(XAUUSD) / XMTrading実データ |
| 時間足 | M1(1分足) |
| 期間 | 2020年1月 〜 2026年6月(約6.4年) |
| データ品質 | モデリング99.90%(全ティック)/ 不整合エラー0 |
| 総トレード数 | 1,582回(全てロング・ショートは0) |
| 勝率 | 62.77%(993勝 / 589敗) |
データ品質は高い水準です(全ティック99.9%・不整合エラー0・6.4年・1,582トレード)。「データが雑だから当てにならない」というレベルの話ではない前提で読んでください。
本題1:取引の半分以上は「時間切れの小負け」
まず一番意外な事実から。Arseneの取引で一番多い決済は「利確」でも「損切り」でもなく、「時間切れ(時間撤退)」です。割合は54.6%。過半数です。
「時間切れ決済」というのは、ざっくり言うと、エントリー後、一定の時間が経っても勝負がはっきりつかなかったポジションを、利確でも損切りでもなく”時間で”手じまいする仕組みです。具体的な時間や条件はArseneの中身なので書きませんが、挙動としては「ダラダラ持ち続けず、決着がつかなければ早めに撤退する」という動きです。
この時間切れ決済、平均するとわずかにマイナスです。プラスのものもマイナスのものもありますが、ならすと「小さな負け」に寄っています。
なぜこういう設計になっているのか。思想の部分だけ話すと、Arseneは「上昇トレンドの押し目を、小さく素早く取る」スキャル型のEAです(詳しくは設計思想の記事に書きました)。狙いは「押し目に入って、トレンドが再開したらサッと利確する」こと。ところが、入ったあとにトレンドが再開せず、ダラダラ横ばいになることも当然あります。
そういう「狙いが外れたけど、大きく逆行もしていない」中途半端なポジションを、ズルズル持ち続けずに、時間で切って次に行く。これが時間切れ決済の役割です。大きな損切りに育つ前に、小さなマイナスで撤退して、資金とポジション枠を解放する。「決着しない取引は、傷が浅いうちに畳む」という守りの動きです。
ここが、このEAの性格の土台です。取引の半分以上は、派手な勝ち負けではなく「小さく払って撤退する、地味な小負け」で出来ている。 レンジや横ばいが続く相場では、この小負けがコツコツ積み上がります。
本題2:稼ぎは38.1%の「利確」に集中している
では、どこで稼いでいるのか。それが利確(TP)38.1%です。
取引の約4割が、狙い通り利が乗って確定したトレードです。Arseneの利益は、ほぼ全部ここから生まれます。さっきの時間切れの小負けを、この利確が上回ることで、トータルがプラスに寄る構造です。
ここで思い出してほしいのが、Arseneは「利確は小さく(TP小)」という設計だということ。1回の利確は、決して大きくありません。「ドカンと大きく取る」のではなく、「小さい利確を、回数で積む」タイプです。
イメージで言うと、こうです。
- レンジ・横ばい相場:時間切れの小負け(54.6%側)が優勢になりがち。利確はあまり伸びず、ジリジリ削られる時期。
- 上昇トレンドが出た相場:押し目買いが次々ハマり、小さい利確(38.1%側)が連続で決まる。ここでまとめて回収する。
つまりArseneの収益は「平常時にコツコツ払った小負けを、トレンドが来たときの利確ラッシュでまとめて取り返す」というリズムで出来ています。これは、検証記事で何度も書いてきた「Arseneはゴールドの上昇相場に依存する」という性質の、取引レベルでの正体でもあります。上昇トレンドが来ないと、利確ラッシュが起きず、小負けだけが残る。 決済内訳は、その依存構造をそのまま映しています。
本題3:損切りは7.3%。回数は少ないが、1回が重い
最後が損切り(SL)7.3%です。
負けの決済というと損切りを思い浮かべますが、Arseneの損切りは、実は全体のたった7.3%しかありません。「めったに損切りに当たらない」EaなのにSL大、という非対称が、ここに出ています。
ただし、ここが大事なところです。回数は少ないけれど、1回あたりの損失は重い。 Arseneは「利確は小さく(TP小)、損切りは大きく(SL大)」という非対称設計です。つまり、
- 勝つときは小さく勝つ(利確38.1%、1回の利は小さい)
- 時間切れで小さく負ける(54.6%、1回のマイナスは小さい)
- 損切りで、たまに大きく負ける(7.3%、1回の損は重い)
このバランスを、62.77%という高い勝率で支えているのがArseneの設計です。勝率が高いから、たまに来る重い損切りを、数で上回った小さい利確で帳消しにできる。勝率が生命線の作りです。
逆に言えば、この非対称型には弱点があります。設計思想の記事でも書きましたが、これは「コツコツドカン」の形になりやすい。小さい利確と小さい時間切れでコツコツ積んだ利益が、たまに来る重い損切り(7.3%)でドンと削られる。だから入口(押し目の選別)の精度が甘くなって損切りの割合が増えた瞬間に、この設計は崩れます。7.3%という低さは、選別がうまく効いている証拠でもあり、同時に「ここが増えたら危険」という監視ポイントでもあります。
決済内訳から見える「Arseneという性格」
ここまでを統合すると、Arseneの”取引の性格”がはっきりします。
平常時は、決着しない取引を時間で小さく畳みながら(54.6%)、小負けをコツコツ払う。上昇トレンドが来たら、小さい利確を連続で決めて(38.1%)まとめて回収する。損切り(7.3%)はめったに当たらないが、当たると重い。それを高勝率(62.77%)で支える――非対称・高勝率・低リスクリワードのスキャル型。
これは、純益やDDという「結果の数字」だけ見ていたら絶対に見えてこない、取引の素顔です。そして、この素顔は、これまでの検証記事の結論とも完全に整合します。
- なぜ上昇相場に依存するのか → 稼ぎ頭の利確(38.1%)が、トレンドが来ないと発火しないから。
- なぜ全期間で均すと優位性が薄い(PF1.08)のか → 平常時は時間切れの小負け(54.6%)が優勢で、トレンドの利確ラッシュがないと取り返せないから。
- なぜ勝率が崩れると一気に脆くなるのか → 重い損切り(7.3%)を、数で上回る小さい利確で帳消しにする設計だから。
数字の結果と、取引の中身が、ちゃんと同じことを言っている。これを確認できたのは、僕自身にとっても収穫でした。
正直に書く:この内訳が教える「弱点の見つけ方」
最後に、誠実に弱点も書いておきます。この決済内訳は、強みの説明であると同時に、「どこが壊れたら危ないか」のチェックリストでもあります。
僕がフォワード(実戦)でArseneを監視するなら、次の3点を見ます。
- 損切り(SL)の割合が7.3%から増えていないか。 増えていたら、押し目の選別が今の相場で効いていない=コツコツドカンの「ドカン」が増えるサイン。
- 時間切れ(54.6%)の平均マイナスが深くなっていないか。 深くなっていたら、レンジで削られる量が想定より増えている=横ばい耐性が落ちているサイン。
- 利確(38.1%)の発火が止まっていないか。 長く止まっていたら、稼ぎ頭が来ていない=上昇トレンド不在で、小負けだけが残る期間。
この3つは、どれも「相場がArseneの得意分野から外れた」ことを示す警告灯です。Arseneは上昇相場の専門機なので、得意な相場でない期間は、この内訳が悪化する形でちゃんと”不調”を表に出します。 それを隠さず読めることが、このEAと付き合ううえで一番大事だと思っています。
なお、念のため毎回書いていることをここでも。現状のArseneは、全期間が最適化に使った期間(インサンプル)の疑いが残っており、「実戦投入済みの完成品」ではなく「検証中の参考値」という位置づけです。この決済内訳も、あくまで過去のバックテスト上の挙動であって、未来も同じ内訳になる保証はありません。
まとめ
今日は、純益やDDといった「結果」ではなく、その手前にある「Arseneがどういうトレードを積み重ねているか」を、決済内訳から解剖しました。
- 時間切れ54.6%・利確38.1%・損切り7.3%。 取引の半分以上は「決着しない小負けを時間で畳む」動き。
- 稼ぎは38.1%の小さい利確に集中。レンジで払った小負けを、トレンドの利確ラッシュでまとめて回収する。
- 損切りは7.3%と少ないが1回が重い。それを高勝率62.77%で支える非対称設計。
- この内訳は「上昇相場依存」「優位性は薄いが頑健」という過去記事の結論と完全に整合する。
結果の数字だけでEAを語ると、性格を見誤ります。どういうトレードの積み重ねでその数字になっているかまで降りて初めて、強みと弱みの本当の在り処が見える。それを数字で確認できたのが、今日の収穫でした。
次は、この性格が「年ごとにどう成績に出たか」――勝った年・負けた年を全部出す記事を書く予定です。
注記(必ずお読みください)
- 本記事に記載したバックテスト結果(決済内訳・勝率62.77%・1,582トレード等)は、特定の検証条件(XMTrading実データ・XAUUSD・M1・2020年1月〜2026年6月・固定ロット・変動スプレッド・モデリング品質99.9%)における過去の結果であり、将来の成果を保証するものではありません。
- 本記事はArseneの内部ロジック(具体的なエントリー条件・しきい値・パラメータ・決済の正確な数値ルール)を開示するものではなく、決済結果から見える挙動の傾向を共有することを目的としています。
- FX・自動売買にはリスクが伴い、元本割れ(損失)の可能性があります。投資は自己責任で、余裕資金の範囲で行ってください。
- 本記事は特定のEA・通貨の売買を推奨するものではなく、検証記録の共有を目的としています。

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